がくしゅうちょう

書いて残す

介護の仕事してるけど

 

そのひとにはたぶん、私には触れることができない痛みみたいなのがあって、それが傷なのかどうかもわからないけど、いやたぶん傷なんて軽々しいもんじゃないんだけど

 

私がいくら想像したって到達できないような、ふとした瞬間にそのひとをうしろからワッと羽交い締めにして、いろんなもの根こそぎかっさらっていってしまいそうな そんなぼうっとしたくらやみが広がっているのがみえるときがある
今日はまさにそんなかんじだったんだけど

 

声を振り絞ってなまえを呼んでも振り返らない背中とか、日を追うごとに崩れていく手紙の文字、虚ろなまなざし、の持ち主が、たとえばかつての大事なひとだったとして、一生添い遂げようと心に決めたひとだったとして、ちいさいときから自分をずっとみてくれていた、これからもずっとそうだと思っていた家族だったとして

 

忘れる、思い出せない

覚えてるのに、思い出せるのに

 

記憶が残っていかない世界 ってどんなふうなのかな ぜったいにこわいんだろうな
私は覚えているよ、と手を握っても、あなたのなかにはわたしが
いないかもしれない なんて

 

それが、どっちかがしぬまで続く なんて

 

死んじゃうんだな、ひとって
心臓がうごいてるってだけで生きてるわけじゃないのに

 

あんまりにもむずかしくて、むずかしくて

 

なにをいってんだろうな、とは思う
私にはただの仕事なのに