がくしゅうちょう

書いて残す

夜中にお菓子を焼く

 

前の職場で仕事してたとき、辛くて眠れない時に泣きながら夜な夜なお菓子を焼いてた。

何か悲しいことがひとつ起こると芋づる式に他の悲しかったことも思い出しちゃうからしんどくて、ただ泣いてるだけで何にもできない自分のことがよくわからなくなってたけどそれでもひとつひとつ材料を取り出して計って、順番に混ぜて、型に流してオーブンに入れて待ちながら洗い物してたら部屋の中が甘い匂いでいっぱいになっていく。最初はただ材料それぞれがバラバラだったのに自分が行動したことでひとつになって、泣きながらでも怒りながらでも受け入れられないことがあるときでも、手順に沿って手を動かすとちゃんといつもの自分らしい味がするお菓子が焼きあがってることが安心だった。

しかもちょっとずつ上手に焼けるようになってる。

大丈夫大丈夫、こういうものが作れるから自分はまだ大丈夫っておもいながら、それでようやくベッドに入ってたな。自分以外の人には、何もできなくても息をしてるだけでえらいよ大丈夫だよって言えるのに、自分にはそういうこと全然言ってあげられないんだよな。

 

小さい頃よくお母さんと一緒にお菓子作りをした。材料をまぜて型に流して焼くとおいしい食べ物が出来上がるのが単純に不思議で楽しかった。自分の手で何かを作り出すことっておもしろい。大人になってひとりで暮らして、考えることが山ほどあって抱えきれなくて泣きながらご飯食べることがあっても、お菓子を焼いているとまだたくさんのことを考える必要がなかった頃の感覚が戻ってくるからホッとする感じがあるのかな。

 

大人になると考えることが多すぎる。ずっとなんかぼんやり不安だし、ただ生活していくことがこんなにも大変だなんて思わなかったんだよね。好きな人たちはずっと一緒にいてくれるものだと思っていたし、普通に頑張ってたら普通に楽しく幸せに生きていけると思ってたんだけど、どうやらそうでもないっぽい。かなしいな、こんなこと考えるからいけないんだよ〜と思いながら小麦粉やバターやお砂糖や卵が混ざっていくのを見てる。うまく焼けたら、実家に持っていってお母さんに食べてもらおうかな、近所に住んでる友達にも一切れ渡しに行こうかな、遠くに住んでる友達に送ろうかな、ラッピングは最近新しいのを買ったからそれにして、いつもは適当にテープでとめるけど今日はリボンにしてみようかなあとか考えて、側から見たらそんなん何でもいいやろみたいなことをやっていくのが好き。

 

私は無駄なことが好き、正解がないことが、自分でこれにしよ〜っとって決められるものが好き。あれもいいしこれもいいけど、今日はこれなんだよね、まあ決められないんだけどね〜っていうのは優柔不断なわけじゃなくてそういう信念なんだよね。白黒ハッキリつけるのも大切、それは確かにそう、正しい道を正しく歩けば正しくここに行き着くからそうするべきっていうのもそう、でもさ〜………

 

ということを考えながら今日は塩キャラメルのパウンドケーキとかぼちゃプリンを焼いた。

材料が混ざっていく様子、いいよね。

一晩寝かせてから切り分けるから、うまくいってるといいな。お菓子褒めてもらえたり美味しいっていってもらえるとうれしいな。

友達と夜ご飯行ってい〜っぱい食べちゃったからお腹おもくてまだお風呂にも入れてない、お菓子は焼いたのに…日付も跨いじゃった……でも大丈夫、今日は日曜日だからね〜。